2008年1月アーカイブ

東京新聞 2008年1月30日

 糖尿病や高血圧とともに「生活習慣病」の代名詞ともいえるのが高脂血症です。血液中に含まれる脂質が増加した状態で、自覚症状はほとんどありませんが、放置すると動脈硬化を発症し、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞などの疾患が起きやすくなります。昨年、この高脂血症の名称が脂質異常症と改められました。二月一日からの生活習慣病予防週間(七日まで)を前に、その背景や、脂質異常症にどう対応すべきか、名古屋市立大医学部の横山信治教授に聞きました。 (遠藤健司)

 −コレステロール、中性脂肪の値を気にしている人は少なくありません。
 コレステロールは、脂質の一種で、悪者扱いされますが、実は細胞膜の機能を維持するという大切な役割を持っています。また、性ホルモンや、食べ物の消化吸収を助ける胆汁酸を作る材料にもなります。中性脂肪も体内の予備エネルギー源として大切です。ところが、血液中に必要以上に多くなると動脈硬化を発症しやすくなります。
 人間をはじめとした生き物は、コレステロールが足りないときの危機管理策はしっかり持っています。足りなければ、すぐ体内でコレステロールを作れるとか、コレステロールを含む物をおいしいと感じ外部から摂取するとかです。
 そもそも、動物の生命の危機というのは、飢餓・感染症・けがによる失血などだったわけで、飢餓対策のために食いだめをするということは必然的なものでした。ところが、文明が進み、いつも食べられるようになってきたわけですが、われわれの遺伝子は食べ過ぎたときの危機管理システムを獲得するまでには進化していないのです。
 さらに、コレステロールは少し特殊な脂質で、壊すことができません。中性脂肪のようにエネルギーにもならない。胆汁酸に変えて体外に出す以外、代謝する方法がない。結局、自分で食べ過ぎないようにするか、運動して体内にためないようにする以外に手がない。生活習慣を変える以外ないわけです。

 −昨年、動脈硬化のガイドラインの見直しがあり、その中で高脂血症が脂質異常症と改められました。
 血液の中のコレステロールが増えることと、心筋梗塞などの動脈硬化性疾患の発生が相関していることは以前から知られていました。高コレステロール血症とも呼ばれていたように、「(総)コレステロールが高い」といった指標が、そのリスクを判断する上での基礎になってきました。
 ところが、特にこの二十年ほどの研究で、血液の中のコレステロール、中性脂肪などは、一律に血液の中に溶けているわけではなく、LDLやHDLといったいろいろな種類の粒子に分かれて存在していることが知られるようになりました。これらの粒子は、それぞれに機能が違っていて、さらに、その上昇や低下が、それぞれ独立した動脈硬化の危険因子、リスクであることが分かってきました。
 LDL、HDLはそれぞれ悪玉、善玉コレステロールともいわれますが、正確にはコレステロールそのものではなく、コレステロールを運ぶ粒子です。
 全身にコレステロールを運ぶ役割があるLDLは酸化、変性すると動脈壁にたまり動脈硬化の原因となります。わが国の疫学調査でもLDLの数値が高いほど、冠動脈疾患で死亡する確率が高くなることが分かっています。
 一方、改訂の一つのきっかけにもなったといえるのが、HDLの働きです。HDLは、LDLとは逆に、身体の細胞に余っているコレステロールを回収して、胆汁酸に変えるため肝臓に運びます。従って、HDLが少ないと細胞からのコレステロールの回収が少ないことになり、動脈硬化を促進することになる。中性脂肪は、数値が高いほど動脈硬化疾患になりやすいことは疫学的には分かっていますが、なぜそうなるのかはよく分かっていません。ただ、中性脂肪はHDLと強く関連していて、中性脂肪が増えればHDLが少なくなることが分かってきました。

 −個別の危険因子の評価が大切ということですね。
 それぞれが危険因子となると、リスクを判断する上で、これまでのように、総コレステロールが高いというだけでは間違いを引き起こします。実際、総コレステロールが高いからと薬を処方されている人が、私どものところに来られ、よく見てみたら、それはHDLが高いからで、治療の必要がないといったケースなどが結構あるのです。
 どういうタイプの脂質異常かを見極めていただいて、その上で、どういう治療をすべきか、考えてもらいたいということです。このため、昨年の改訂で、総コレステロールではなく▽LDLが高い(140ミリグラム/デシリットル以上)▽中性脂肪(トリグリセライド)が高い(150ミリグラム/デシリットル以上)▽HDLが低い(40ミリグラム/デシリットル未満)−といったそれぞれのリスクの増加に、しっかり目を向けましょうということになりました。三つのうちの一つでも該当すれば、脂質異常症となります。

 −対策は。
 生活習慣を変える以外に、脂質をためない方法はありませんから、基本はこれまで通り食事と運動です。
 LDLが高い人の場合、エネルギーの過剰摂取もその要因の一つですが、コレステロールそのものの過剰摂取や、体質的なものが反映されます。そのため、まずはコレステロールの摂取を控えることです。また、遺伝的にLDL増加が疑われる場合は専門医に相談することが必要です。一方で、中性脂肪は多くの場合、エネルギーの過剰摂取を反映します。食べ過ぎには気をつけましょう。HDLを上げるための特別な方法は分かっていませんが、中性脂肪と相関しているので、中性脂肪が高い方はまずはそれを下げることです。
 薬は、現在使えるものは大きく分けて、LDLを下げるものと中性脂肪を下げるものがあります。しっかりターゲットに合わせることが大切です。
 この春からは「特定健診・保健指導」がスタートします。いくつかの問題点もありますが、冠動脈疾患になるリスクが高いと診断された人は、具体的な食事や運動の指導が行われることになります。警告を受ける機会として意義は大きいですが、やはり自分自身が、どういう病気かをしっかり知り、医師とともに取り組むことが大切です。

 よこやま・しんじ 1946年、岐阜県生まれ。東京大医学部卒。カナダ・アルバータ大内科教授、95年から名古屋市立大医学部教授。専門は生化学・代謝病学。カナダ厚生省脂質ガイドライン委員、中央薬事審議会専門委員、日本動脈硬化学会理事などを歴任。
 
 
健診 4月から腹囲測定追加
 脂質異常、高血圧などのリスクが多いほど動脈硬化を起こしやすくなるというメタボリックシンドローム(内臓脂肪型肥満)の考え方を取り入れた新しい健康診断「特定健診・保健指導」が四月から始まる。国民健康・栄養調査によると、メタボまたはその予備軍は千九百万人超。男性の二人に一人、女性の五人に一人が該当する。新健診は、四十−七十四歳の人すべてに健診と保健指導を義務付け、生活習慣病の人を減らし、医療費を削減するのが狙いだ。
 検査内容は、従来の項目に加え、腹囲が追加されているのが大きな特徴。血液検査の項目ではLDLコレステロールなどが必須項目として新たに追加され、総コレステロールが削除されている。
 健診の結果、表に基づいてリスクが多いか少ないかで階層化され、メタボやその予備軍と判定された場合は、医師や管理栄養士、保健師らによる指導を受ける。
 指導は▽動機付け支援▽積極的支援−の二パターン。動機付け支援では、面接の上、具合的な生活改善計画を立て、半年後に評価を行う。よりリスクの高い人向けの積極的支援では、医師らによる面接後も電話などによる働き掛けが継続的に行われる。
 実施主体は、国民健康保険組合や各企業の健康保険組合などの医療保険者。受診率や改善率が低い場合は、保険者に対する罰則が科せられる。
 
 
食事 食べ過ぎ厳禁総合的管理を
 「入れない」「作らない」「くっつけない」「ためない」−。東海学園大(名古屋市)管理栄養学科講師の兼平奈々さんは脂質異常症にならないための食事のポイントをこう掲げる。
 「入れない」は、コレステロールを体内に入れないということ。そもそもコレステロール過剰摂取はLDLを高くする要因の一つであり、特に動物性脂肪の制限が大切だ。「作らない」は、脂肪を作らせないために、肝臓での脂肪合成を活発にする単純糖質(砂糖・果糖)やアルコールは控えめにと提唱する。「くっつけない」では、LDLは酸化変性し、血管壁に沈着する物質に変化するため、抗酸化物質(ビタミンE、カロテン)の摂取を推奨。「ためない」では、腸管での脂質の吸着を防ぐため排せつ作用がある食物繊維をしっかり摂取することが望ましい。なお、「食べ過ぎないことは大前提」と言い、「もう一口食べたい」の我慢から始めたい。
 カルシウムを補うために牛乳を多く飲んだり、ビタミンを取るために果物を多く食べたりする人もいるが、牛乳は脂質が多いし、果物は糖を多く含む。兼平さんは「食事療法のポイントは、総合的に管理すること」と強調した。イラストは、脂質異常症だけでなく、メタボにならないための食事の目安。参考にしたい。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/health/CK2008013002083509.html

2008年1月25日、当代健康報は長すぎる性行為は病気を引き起こすとの記事を掲載、読者に注意を呼びかけた。

性行為は一般的に前戯、性行為、行為後の軽い愛撫の3段階に分かれる。合理的な時間配分は2対3対2と言われている。全体の時間では数分から数十分まで個人差があるが、30分を超えた時点ですでにかなり長い部類に入り、1時間を超えるケースは少ない。ただし性行為は体力を激しく消耗する「運動」であり、時間が長すぎることで病気になってしまう可能性があるのだという。前立腺炎、尿道炎などが代表的だが、時には心筋梗塞や脳血管障害まで引き起こすことがある。

ED治療薬を使っている場合、特に危険性は高まる。性行為の時間は各人の体力に合わせるべきで、薬を使ってまで無理に楽しみを得ようとするべきではないと注意している。(翻訳・編集/KT)
2008-01-27 21:35:45 配信

http://www.recordchina.co.jp/group/g15087.html

健康的な4つの生活習慣(禁煙、運動、適度なアルコール摂取、果物や野菜を1日に5食分摂取)のある人は、これらの生活習慣をもたない人に比較して、寿命が平均14年長いことが、英国の研究で明らかになった。

今回の研究は、英ケンブリッジ大学と英医学研究審議会(MRC)が45〜79歳の約2万人を対象に実施。調査では、1993〜97年に癌(がん)や循環器疾患に罹患していない被験者が、健康的な4つの生活習慣に対する質問に回答した後、2006年まで追跡調査された。

研究者らは、被験者に対し健康的な4つの生活習慣それぞれに1ポイント付与。年齢で分解計算した結果、平均11年間の死亡率は0ポイントの被験者では4ポイントの人より4倍高かった。結論として、0ポイントの被験者は、14歳年長の4ポイントの被験者と同等の死亡リスクであることが判明した。このことは、ボディ・マス・インデックス(BMI:肥満指数として用いられる)や社会的階層とは独立して(非依存性に)認められた。

別の人口集団や、これら4項目を合わせた生活の質(QOL)への影響においてさらに検討する必要があるが、研究者らは「この4つの健康的な生活習慣が、中年者や高齢者の健康を著しく向上させることを示唆している」と述べている。研究は、欧州10カ国で実施された、これまでで最大規模の食事と健康の関連性を調査した研究EPIC(European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition)の一環として行われた。研究結果は、オンライン医学誌「PLoS Medicine」2008年1月8日に掲載された。

(2008年1月8日/HealthDayNews)

http://health.yahoo.co.jp/news/detail/?idx0=w30080103


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