三浦豪太さん、奇跡の生還だった

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5月28日11時2分配信 産経新聞

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命からがらベースキャンプへ戻どり、医師の治療を受ける三浦豪太さん=5月26日、ネパール・エベレストBC(木村さやか撮影)
 【エベレスト・ベースキャンプ(ネパール)=木村さやか】75歳で世界最高峰・エベレスト(8848メートル)に再登頂したプロスキーヤー、三浦雄一郎さんに同行し、登頂前日の25日に高地脳浮腫に襲われた次男、豪太さん(38)が下山途中、幻覚を見ながら自身で筋肉注射し、九死に一生を得ていたことが分かった。

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 豪太さんは25日、キャンプ4(C4、8000メートル)を出発した午前8時ごろから、息苦しさを感じていた。前日、C3(7300メートル)から7600メートル地点まで無酸素で登り、「少し無理をしたかな」と思ったが約3時間後、休憩を終えて立ち上がろうとすると足に力が入らず、手の握力がなくなったような感覚に襲われた。
 「おれ、おかしいから、たぶん登れないと思う。下りるよ」。心配するアタック隊の五十嵐和哉さん(48)に伝えたが、ベースキャンプ(BC)の無線の周波数などを尋ねられても、全く思いだせない。登攀(とうはん)隊長の村口徳行さん(51)は高地脳浮腫を疑い、「とにかく意識のあるうちに、下りられる限り下りろ。絶対C2(6400メートル)までは下りろ」と指示した。
 午前11時半、シェルパ2人が前後について約8300メートル地点からの下山が始まった。途中、豪太さんは左隣に知らない男性がいるように感じていた。その男性がしきりに「早く、早く下りろ」「注射しろ、注射。ザックに入っている薬を使え」という。ザックには雄一郎さんの不整脈の薬のほか、高山病対策の薬や注射器も入っている。出発前に読んだ小説で、高地脳浮腫に有効と書いてあった「デキサメサゾン(ステロイド剤)」の筋肉注射もあった。「ああ、あの注射か」。シェルパに道具を出してもらい、自分でオーバーパンツの上から右ももに注射した。
 注射から5分ほどすると、意識が徐々にはっきりしてきたが、手足のしびれは、右手右足の麻痺(まひ)に変わっていった。両足はほとんどふんばれず、左手でロープを握って滑るように下った。左隣の男性は相変わらず、「早く下りろ」などと話しかけてくる。「早くって言ったって、足が動かないんだよ」と言い返したり、前後のシェルパを確認したり...。「死ぬかもしれない」と強烈に感じた。
 C2(6400メートル)に着いたのは午後8時ごろ。BCにいた救急医療医の志賀尚子さんに無線で連絡した。志賀さんは高地脳浮腫と診断し、薬や酸素吸入を指示。豪太さんは翌26日午前、BCへ戻った。
 エベレストでは今シーズン、無酸素登頂を目指したスイス人のベテラン登山家が死亡している。志賀さんは「デキサメサゾンを早い段階で投与したから意識障害が進まずに下りることができたんでしょう。よく打てましたね」と驚き、注射していなければ「120%危なかった」と話した。
 回復した豪太さんは「お父さんのためにと勉強したことを、まさか自分に使うとは思わなかった。これほど死を意識したことはなかった」と振り返った。

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最終更新:5月28日11時2分


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