記事:共同通信社
提供:共同通信社
【2008年7月7日】
自殺防止に取り組む特定非営利活動法人(NPO法人)「自殺対策支援センター ライフリンク」(東京)や専門家らのチームは4日、自殺した305人の遺族からの聞き取りや警察庁のデータを分析した初めての「自殺実態白書2008」を公表した。自殺に追い込まれるまでに、うつ病、家庭不和、負債など平均して4つの要因が連鎖している-などの内容。
年間自殺者は1998年から10年連続で3万人を超えたが、白書はこの間に失われた生涯賃金は計約22兆1200億円に上ると推計。全国の警察署別のデータを初めて分析し、地域ごとの特性も浮き彫りにされた。
チームのメンバーらは4日、白書を自殺対策担当の岸田文雄内閣府特命相に提出。データはライフリンクのホームページで公開された。
ライフリンク代表の清水康之(しみず・やすゆき)さんは「自治体単位で対策に取り組む手掛かりにしてほしい」と話している。
調査は、自殺の要因を68に分け、自殺者305人の遺族から聞き取りを実施。分析の結果、会社員なら「配置転換の後、過労と職場の人間関係の悩みが重なり、うつ病を発症」のように、自殺に至るまでに平均して4つの要因が複合していることが分かった。
最も多かった要因は「うつ病」の139件。続いて家庭不和、負債、身体疾患、生活苦、職場の人間関係、職場環境の変化、失業、事業不振、過労-の順。
また、自殺前の1カ月以内に相談機関を訪れていた人は全体の62・4%に上り、半数以上がサインを発しているのに自殺を防止できない現状も明らかになった。清水さんは「精神科などの医療機関が自殺を食い止める力をつけることや、医療機関に至る前の包括的支援が重要」としている。
2004-06年の自殺者数を発生地の警察署ごとにみると、青木ケ原樹海を抱える山梨県警富士吉田署が389人で最多。次いで福岡県警早良署330人、青森県警青森署291人の順だった。
ライフリンクのアドレスはhttp://www.lifelink.or.jp/
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