泳げない人のことを金槌と呼ぶが、これは実際にある。
これらは二つに分かれ、
1、技術的に泳げない(泳力不足)。
2、身体組成の比重でどのようにしても沈んでしまい呼吸が出来ない。
となる。
この、1、技術的に泳げない(泳力不足)。 というのは練習すれば大抵どうにかなるのだが、顔を水に浸けられないとかそう言う恐怖心がトラウマとなっているような場合もあるようで、そう言うときは「大丈夫だよ」というような安心感を作る事から始まる。
2、身体組成の比重でどのようにしても沈んでしまい呼吸が出来ない。
という現象が普通はなかなか理解が難しいようである。特に泳げる人にはそう感じる。
この場合1の泳力不足はあまり関与しない。
通常人間は体脂肪(皮下脂肪)があるが、それが 15% ~ 25% 程度あれば比重の関係で水に浮きやすい。体脂肪の比重は 1.1 くらい、除脂肪組織の比重は 0.9 くらいと言われている。
中庸な方や、体脂肪率が少なくても体重が軽い方は、呼吸をすると息が 2000 ~ 4000cc くらいは通常は入るので、その分浮力が増す。
そうすると何をしなくても水に浮けるのである。
そして、大抵は息を吐くと水に沈む。
「残留空気」というのか、正しい名称は忘れたが、息はすべて吐いたつもりでも 1000cc くらいは肺に残っている。肺というよりは気道と言う方が正しい。
ボンベなしの素潜り世界記録などでは 100m くらい潜るらしいが、この残留空気が水圧に負けてつぶれるのが悪い影響を与えたりするので、そこを筋トレで強化するのだ。かなりマニアな競技だ。
体脂肪率がこれよりも多い方の場合は、こんどは沈まなくなる。おおよそだか 30% 程度を超えると仰向けに浮かんでいる場合は、息を吐いても呼吸面(要するに鼻と口)は水面上にあるような気がする。
体脂肪率が 50% を越えたりすると、どうやっても沈めなくなる。
水中法で体脂肪率が計れなくなるのである。
普通体脂肪率が 50% を越えるような場合は、男性だと体重 100kg 程度になるので、それで計算してみると、
・体重 100Kg
・体脂肪 50kg * 1.1 = 55L
・除脂肪体重 50kg * 0.9 = 45L
・容積合計 = 100L
おお、これだと息をしないでちょうど釣り合う。
現実的にはこのような方が沈まないのを見ると、比重がもうちょっと違うのかもしれない。
こういう浮きやすい人は水中ウォーキングをしてもふわふわして足が地に着かない感じとなり、踏ん張りが利かずになかなか歩けなかったりする。
一般的な方の水泳の指導をしている水泳指導者や、現場で水中ウォーキングの指導をした事のない様な指導者は、こういうのを理解してくれない事もある。
ちなみに水泳選手の体脂肪率は、他の競技の選手と較べると高い。
これは体脂肪が競技記録に影響を与える率が低い事や、浮きやすくなる事で却って都合が良くなったり、または体温より冷たい水に体熱を奪われにくくなる為でこれもまた都合が良いとなるためである。
ビルダーや短距離陸上選手などは筋肉量が多く脂肪量が相当少ないので、息を吸っても全身の比重が水より重い。
元々泳げる水泳選手が引退しビルダーに入ったとすると、泳法で上体を船の様に持ち上げられるので呼吸は出来るはずだが、そうだとしても泳ぐのを止めると沈むので、そうなると息が出来ない事になる。泳ぐのを止めると息が出来ないのではまるでマグロみたいだ。
しかしそう言うのはまれで、ビルダーは大抵水泳は嫌いの様である。
そう言う人が息をする為には足が床に着いてぴょんとジャンプして、沈むまでの間に息を吸うのが精一杯なのである。通常こういうのは溺れている様に見える。
短距離陸上選手が水泳を好きかどうかは知らない。機会があったら聞いてみようと思う。