理系の会話がワカラナイ...

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<<参照 紙面より>>

R25

第8回
理系の会話がワカラナイ...

「隣の理系がワカラナイ」というタイトルで
文系人間の私が連載しているこの企画ですが、
果たして、理系の人の何が「ワカラナイ」んでしょうか?
もう7回もやってきたくせに、何がワカラナイのか、
自分でもきちんと理解していなかったことに気づきました。

で、しばらく「うーん」と考えてみたところ、
「理系の人の"会話"が分かりにくいのかなぁ」と
ぼんやり思いつきました。

じゃあ、どうして会話が分かりにくいのか。
会話の中に理系的な専門用語が出てくるせいかもしれませんが、
どうも、専門用語の問題だけではないような...。
こう、もっと、「会話そのもの」がワカラナイという感じなんですよね。

それは理系の人も、我々文系に対して感じているようで。

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娘が高専に入学するので、女子の理系を検索していて見つけました。私自身が高専卒→家電メーカ→IT企業(技術系SE)なので、文系との接点が少なく理系は少数派という感覚がありませんでした。息子が文系で社会学系学部を今年卒業したのですが、中学生の頃から話が合わなくなりました。会社でも営業からはつい距離を置いてしまいます。
投稿者:「Taka」さん(福岡県/49歳/男性)

Takaさんは文系の息子さんと「話が合わない」と言っていますが、
どうして、理系と文系とでは話が合わなくなってしまうんでしょうか。

今回は、そこら辺のところを探ってみたいと思います。
 
 
 
理系の人たちは
「宇宙語」を使っている?

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宇宙部の二人(左が佐藤さん、右が川本さん)。それまで一人で「ほぼ日」のシステムを支えてきた佐藤さんは、川本さんの入社に際して「宇宙語が通じる仲間ができた!」とヒザをバンバン叩いて大喜びしたそうです。

私のような理系オンチな文系人間にとって、理系の人はよくワカリマセン。特に難解なのが会話。一般的な会話の中に理系的なトピックや専門用語が出てくるせいかもしれませんが、私が友だちとするような会話とは、内容も質も違うような気がします。その違いとは何か、ちょっと面白いところでリサーチしてみました。

伺ったのは、WEBサイト「ほぼ日刊イトイ新聞(通称「ほぼ日」)」のオフィス。以前から「ほぼ日」読者である私は、ここのシステム担当者たちが「宇宙部」と呼ばれているのを思い出し、彼らの何が"宇宙的"なのか、聞いてみることにしました。「宇宙部」なんて呼ぶからには、ほぼ日の人たちも、理系の人(システム担当者)を「なんか違うぞ」と思っているかもしれませんから。

まず、お話を聞いたのは「宇宙部」の名付け親であり、社内一の宇宙部ウォッチャーを自認する菅野綾子さん(通称「スガノさん」)。宇宙部独特の雰囲気が面白くて、何を言っているのか分からないのに、打ち合わせしている様子をニコニコ眺めているのが好きなのだそうです。

「『宇宙部』よりも先にできたのが『宇宙語』っていう表現です。システム担当者って、暗黒の画面を見つめて解読不能な文字を打ち込んでいるんですよね。それを見て『今は宇宙語を使っているから話しかけちゃダメなのね』みたいに話したのが最初でした」

そのとき、スガノさんから"宇宙語"を使っていると言われたシステム担当者の佐藤智行さん(通称「ベイちゃん」)は「それは便利な言葉だ」と思ったとか。

「宇宙語という言い方は、コンピュータ用語とか、プログラミング用語とか、業界でよく使われる英語とか、すべてを指す言葉として便利だなと。不具合の原因について質問されたときなど、どうしても平易な言葉に翻訳できないことは『これは宇宙語なんだけど』と前置きをして話すこともあります。それに、『宇宙語』っていい言葉ですよ。『ワケが分からない言葉』と言われるより『宇宙語』って言ってもらった方がうれしいです」

そして、2007年9月に川本比佐雄さんが入社してシステム担当者が2人になったことで「宇宙部」が誕生しました。とはいえ、社内ではマイノリティな2人。使っている言葉以外にも、周囲との違いを感じることはありますか?

「僕たちはあいまいさを嫌いますね。だから、会話の中で疑問点があったりすると『なんでそんな答えが出てきたの?』とか聞いてしまう。こちらは全く悪意なく、ただ言葉通りの意味で、純粋に質問しているだけなんですが、それを言うと文系の人には嫌われてしまいます」(ベイちゃん)

「僕も、会話や行動に対して『それはこうした方がいいのに...』と思うことが結構あるんですが、そのスイッチは会社に来たら切ることにしています。細かすぎて嫌がられちゃうので(笑)。ただ、ちょっとだけ言わせていただくと、会議で配布する資料には必ず見出しの頭と各ページに番号を付けておいてほしい。そうすれば『2枚目の3番ですが』というように、確実に素早く指摘できますから」(川本さん)

彼らに言わせると、厳しく聞こえるそんな言葉も「将来困ったことにならないように。そして、どんなことでも正確かつ合理的に行うため」の提案であるらしく、お小言などではないのだそうです。川本さんによれば「むしろ愛」なのだとか。

理系の人に「何を根拠にそんなこと言うの?」なんて言われると、怒られているのかと思ってビクビクしてしまいますが、純粋に「その根拠」が知りたくて質問していたなんて...(文系の人がこんなことを言う場合は、だいたい嫌味ですよね)。

「怒っているときは『怒ってる』って言いますから。それ以外のときは怒っていませんよ」(ベイちゃん)

そんな彼らに「言わないでしょ! それなら"怒ってるシール"でも貼っておいて!」と言うスガノさん。それに対して「それもいいですね」と答える宇宙部の2人。冗談なんだか本気なんだか分かりませんが、ちょとずつズレている会話をお互いに楽しんでいる様子です。

「宇宙部」なんて呼ばれて怒っているかと思えば、むしろ喜んでいるようですし、お互いに「ワカラナイ」を楽しんでいるから、職場の雰囲気も和やかなんですね。「ワカラナイ」が楽しいことだなんて、知りませんでした!
 
 
 
どうして理系の話は
「理屈っぽい」と言われるの?

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『理系アタマのつくり方』四ッ柳茂樹/サンマーク出版
この本では、理系アタマの特徴である論理力のほか、抽象力、計算力、実験力を身につける方法も紹介。なかでも、数字と仲良くなる方法は、数字アレルギーの私でも「できるかも」と思えるありがたい内容でした!

これまでにお話を聞いた理系の人々、そして投稿をくれた理系の人々によると、彼らはしばしば「理屈っぽい」と言われてしまうそうです(申し訳ありませんが、私も、たまーにそう思います)。

それを良く言えば「論理的」という表現になるようですが、そもそも「論理的」って具体的にどういうことを指すんでしょうか? 理系のアタマの中を理解するには、その点を聞いておく必要があるようです。

そこで、お話を聞きに行ったのが『理系アタマのつくり方』の著者である四ッ柳茂樹さん。四ッ柳さんは京都大学大学院工学研究科情報工学専攻の修士課程を修了したバリバリの理系アタマの持ち主です。

四ッ柳さんによると、理系の人には「前提条件のはっきりしていない話にストレスを感じる」という特徴があるそうで、どんな話をするにしても、その前提となるルールを確認せずにはいられないのだとか。

例えば「今日は暖かいね」と話すにしても、「東京都心において」「昨日までの1週間と比べて」という前提条件を確認したい。なぜなら、それらの前提条件がないと「でも、沖縄よりは寒いし、東京でも8月よりも寒い」となってしまうから。

お天気のたとえは極端だとしても、このように、どんなことにおいても前提条件を求めてしまうのが理系アタマであり、理系の人に多いと四ッ柳さんは言います(そういうところが理屈っぽく見えていたんですね...)。

「大事なことは、前提条件と結論が100%になること。『ソクラテスは人間である。人間は必ず死ぬ。よって、ソクラテスは必ず死ぬ』というのは有名な三段論法ですが、この論理が成り立つのは『ソクラテスは人間である。人間は必ず死ぬ』という100%の前提があるから。このように前提と結論を連続して積み上げていくことが論理的思考だと思います」

しかも、理系の人は「何かを話すときには正確に伝えたい」という気持ちが強いそうで、「正しく伝えるためにも、しっかりと前提条件を確認しておきたい」となってしまう(だからますます回りくどくなってしまうのか...)。

「理系の人は95%可能なことでも『ただし5%ダメになる可能性がある』と考えずにはいられません。ところが、(文系出身の)営業職の人などは5%しか可能性がなくても『100%大丈夫です。お任せください』と言える。これは対人能力の高さがあるからできること。すごいスキルだと思います」

ということなので、理系の人と話していて「なんだか話が難しくて理解できそうにないぞ...」と思うことがあったら、「少々正確さを欠いてもいいので、分かりやすく(または簡潔に)話してほしい」とハッキリ言ってOK。理系の人は、そんなことを言われても、少しも失礼だとは思わないのだそうですよ。ただし、「正確さを欠いて話すことなどできない!」という人も、たまにいるようですが...。

さらに、四ッ柳さんからは「文系の人はすでに対人能力があるように思いますから、論理的思考も身につける努力をすれば、ビジネスの成功確率がアップしますよ」との提案あり。

著書にも書かれているそうですが、論理的思考を身につけるには、どんなことに対しても「なぜ?」「どうしてこんな現象が起こっているの?」と考えるクセをつけるトレーニングが有効だそうです。ただし、「なぜ?」の答えが出たとしてもそこで満足せず、その答えからさらにもう一歩「なぜ?」を深めることが大事。

まずは日常生活の中の小さな疑問からやってみましょう。「どうしてコンビニでは雑誌を窓際に置くの?→お客さんがたくさんいるように見えるから→どうしてお客さんがたくさんいるといいの?→お店に入りやすくなるから→......」というように、「なぜ?」をつなげる練習を。

理系の人を「ワカラナイ」と言うばかりではなく、理系的思考方法を自分も身につけようとしてみるわけですね。それも「ワカル!」につながる第一歩かもしれません。


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ほぼ日刊イトイ新聞


今回のまとめ
今回お話を聞いた四ッ柳さんの言うように、
「正確さを求めるあまり、あいまいな表現ができず、
前提条件を確認せずには話を進められない」
というのが理系の人の特徴ならば、
それはやはり「理屈っぽい」のかもしれません。

でも、「その場限りの適当な会話」ばかりの私から見れば、
そんな考え方ができるなんてすごいことで、素直に尊敬してしまいます。
論理的に考えるトレーニング、やってみようと思いました。
(文章を書くうえでも絶対に役立ちますから)

今後、読者の皆さんに送っていただきたいコメントは、
・理系か文系か分かりにくい分野
・博士号を持っているメリットとデメリット
・理系の人が「そっちこそワカラナイよ」と思う文系の言動
などなど。今回の感想も含め、たくさんのコメントをお待ちしています!
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こちらでは、R25.jp編集員が気になったコメントを紹介中!


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このページは、hisaが2009年3月30日 13:20に書いたブログ記事です。

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