今回一連で書きたかったのはここです。
体重比挙上重量と疲れ具合の違い
筋の刺激(トレーニングの強度)は RM 負荷で数値で表します。
この負荷を与えないと、「筋に目的の変化が現れない」と言う数値です。
全身の負荷としてトレーニング強度は、「疲労困憊に至る」のような疲れ具合で表し、これは数値化されません。
また、このような言い方で強度で表現するトレーニングは、どちらかというとインターバル走などで多く使われ、レジスタンストレーニングではあまり見かけない様に思います。
私は、レジスタンストレーニングでは、体重比挙上重量と疲れ具合はかなり近いと思っています。
また、挙上重量は限界重量以上は挙がらないので、
「きのう迄体重の半分も出来なかったけど、今日から気合いで体重の2倍を挙げる」
と意気込んでも、それに至っていないと当然無理です。
そのため女性の場合は男性のような負荷にならない事がほとんどで、
「女性は疲れようにも、男性の様に疲れようが無い」
といえます。
トレーニングを積んでくるとやがて負荷は増えるのですが、
・競技選手の場合は競技成績の向上に繋がるトレーニングをしたいので、成績に繋がればトレーニングの負荷は増えていき、そうで無い場合はそのトレーニングそのものを省く事があるので、負荷への見方が肥大目的とは違うところにある。
・女性ビルダーの場合は、筋肥大そのものが目的となり、挙上重量も相当上がるので、男性と同じ様な疲れ具合となる。
といえます。
しかし一般的なシェイプアップを目的とする女性の場合は、そういう筋肥大の追求が必要かと言うと大抵はそうでもありません。そのため
「それぞれの部位のシェイプアップの為に必要な強度」
となると、負荷が際限なく上がる訳ではなく、またその必要も無いと言えるでしょう。
シェイプアップで始めたトレーニングを重ねていくうちに身体の変化が面白くなって、
「いつの間にか選手になっていた」
と言う方もおられますので、その道もお勧めです。
男性の場合は素で強度が高いので、
「男性に必要な強度のトレーニングをするだけで相当疲れる」
というのがお分かりいただけたとと思います。
こういう為かどうか分からないのですが、同じようなプログラムでトレーニングをすると、トレ直後の疲労度や、ちょっと時間が経ってからの回復は男女でそれぞれ違い、男性は疲労が暫く続く傾向があり、女性は男性よりも疲労からの回復が早いように感じています。
そのため、初心者の段階では男女とも同じようなプログラムで出来ますが、
・男性はある程度の期間トレーニングをしたら、主要種目一つとそれに付随するパーツ単位でのトレーニングに分割し、部位ごとに日を改めて行い、それぞれの強度を高める方が疲れも少なく効果も現れやすい。
・女性は全身を動かす主要種目を活用し全体の強度を上げ、分割の内外で多少の部位の重複があってもその方が効果が現れやすい。細かく分けすぎると、内分泌系に必要な強度が高まらずに、却って効果が現れにくい。
という違いや傾向がある様に感じています。
もちろんこれらはその人の求める目的な必要な強度によって変わります。そのため女性ビルダーとなると別でしょう。
肥大と減量の両方に同じ傾向は当てはまる
減量をする前に肥大をした人はある程度の段階から減量をするのですが、その時点で男女とも数ヶ月感のトレーニングをしている事になります。
負荷の差は、肥大時であっても減量時であっても、そのまま当てはまります。
減量時の筋の維持に必要な負荷の強度を、私は「 60% 1RM 程度」と考えているのですが、その負荷でスクワットやデッドリフトをした場合の疲労感は男女で相当違います。
それぞれの負荷を計算すると、以下の様になります。
前の数字が1年くらい経験を積んだ人の例で、()かっこ内が初回の数ヶ月間の筋肥大後の数値です。
男性の場合は、
・スクワットは体重の 120%(初回の筋肥大後の減量では100%)
・デッドリフトは120%(同、100%)
程度となり、
女性の場合は、
・スクワットは、体重の 70%(同、50 ~ 60%)
・デッドリフトは、体重の 70%(同、50 ~ 60%)
となります。
初回の数ヶ月間の肥大の場合は、男性の方は女性に較べ肥大効果が高い様に思います。
これは男性は大抵若い頃に多い食事量を経験しているのとまたそれを増やす事に抵抗が無いのと、女性は大量に食べる経験が男性より少ない事とそれ自体に抵抗がある事に起因する様に思います。
そのため数ヶ月の時点での筋肥大は、どちらかと言うと「女性の方が肥大の達成度が低い」と感じます。
これらにより減量時に 60% の筋出力のトレーニングをするとしても、
・男性はスクワットやデッドリフトでは体重と同じかそれ以上を挙げないとならない
のに対し、
・女性は体重の 50% ~ 60% の負荷で、得られる効果が男性とほぼ同じ
と言えると思います。
性差による減量方法への応用
女性の場合は、
・減量時に体脂肪の分解を狙う為に成長ホルモンを出すプロトコルは、筋肥大時と同じスクワットやデッドリフトの主要複合種目を 10RM プロトコルで行っても、疲労の回復や消費量からみても、あまり差し支えないだろう。
・減量時の筋グリコーゲンが不足している状態では 10RM 強度自体が肥大時の 60% 1RM 程度に当然下がっているだろうから、相対的な 10RM 負荷はほぼ問題なく保てるだろう(RM とは相対的な負荷なのです)。
・そのためこれら主要複合種目の後に脂肪燃焼プログラムを組み合わせる事で、筋の保持と脂肪分解と燃焼がある程度行えるだろう。
・これらの基礎に過不足分をアジャストする事でほぼ満足のいくところ迄整えられるだろうから、抜本的に方法を変える必要は無いだろう。
と考えています。
男性の場合は、
・男性の方が疲労度が高いので、このような全身種目を用いるプロトコルは使いにくい。
・そのためこれらでは強度を下げ別な方法と組み合わせるか、減量方法そのものを上記プロトコルから離れて考える方が適切であろう。
と考えています。
また、実際に男性ビルダーの場合はそのようにしている例が多いと感じます。
纏めのようなもの
これらにより、性別に関わらず、筋量が増えるほど、減量の質も方法も、難しくなる様に思います。
筋量は性差での違いが大きいため男女で表す事が多いですが、根本的な理由としては上記にあるのではないかと考えます。
競技者でない一般的な女性の方が、レジスタンストレーニングでシェイプアップをしたり、またはその技法を減量に活用するのは過去にあまりないことですので、これから様々な可能性が見いだせるのではないかと考えています。