筋肥大を目的としたレジスタンストレーニングは、現在は
「いかに内分泌系に働きかけるか」
という考え方になっていると思う。
筋出力の向上は 1~3RM、筋肥大は 10RM(8~12)、筋持久は 20RM のように経験上いわれてきたが、近頃は筋肥大のトレーニングに必要なプロトコルが理論的に裏付けられる様になってきた。
筋出力の向上は、既にある筋肉を最大限使う事で、筋そのものより運動神経の開発が目的である。
筋持久力の向上は、これは筋内部の乳酸の早期除去なので、毛細血管を増やす事で筋の緊張が一瞬抜けた際の血流を増加させ、新しい血と入れ替える事である。「筋時給能力の向上」という特別な要素があるのではなく、毛細血管の発達による血流の増加である。しかし、これ自体今はあまりいわれない様に思うこともあるし、何とも言えない。
しかし、筋肥大のメカニズムは上記よりも分かっていない様に思う。
ただし運動やトレーニングをする人は、経験上知っていたりそう聞いているので、筋肥大を狙う場合は大抵 10RM 程度の強度で行う。
私は面倒なのでいつも 10RM と書いているが、部位や人により違うので、それにふさわしい強度なら問題ない。
しかいそう細かいところを考えたところで、無理くりがんばると 2reps くらい回数が増えるし、ちょっとレストポーズするとさらに挙がったり、フォーストレップをするとどこまでが自力なのか不明になるので、 RM 回数の 20 ~ 30% 程度の違いははあまり意味がなくなる。
筋肥大の理論的裏付けは毎年の様に入れ替わっている。
ただし現実的なトレーニング内容はあまり変わらないように思う。
筋肥大のメカニズム 何が作用するか?
筋肥大のメカニズムを書いてみようと思う。
今まで主に、乳酸、筋破断、内分泌系、筋への直接刺激などが言われてきている。
しかし本当かどうかはいまだよく分からない。
乳酸
むかし、筋肉痛は乳酸が起こすと考えられていたが、実はほとんどそうでは無いようだ。
極度の乳酸が溜まるといわれる 400m 走や、エアロバイクの HIIT、クロスカントリースキーでは、ひどい筋肉痛はあまり起こらない。
また、パンパンになる様に、10RM 負荷から徐々に低減していくアームカールをもう動かないくらいに連続して行うと乳酸はすごい溜まるが、だとしてもひどい筋肉痛は起きない。
しかしこれは筋肉痛に限っての話で、「筋肥大にどう働いているか」というと別な話である。
筋肥大には筋グリコーゲンが充実していることが条件の一つとなっている。
筋肥大時に行われる 10RM のトレーニングは糖質をエネルギーとする強度で、筋グリコーゲンがないと十分に行えない。
3 RM 以下の重くなる強度なら ATP が溜まるのをじっくり待てばできるので減量時にもピーク重量は落ちにくいが、減量時は筋グリコーゲンが少ないので 10RM 強度のトレーニングは回数が続かなくなる。
しかしこれで乳酸が筋肥大に作用するかというとわからなく、上記は「乳酸強度の運動をするには十分な筋グリコーゲンが必要である」ということである。
ただし私は、乳酸濃度による筋への直接刺激は筋肥大に必要な要素ではないかと考えている。
筋破断
それから筋破断が筋肥大を起こすと考えられて、今もそれは必要な要素の一つであろうと考えられている。
筋肉痛が出ると満足感が高いが実はあまり意味が無い。どちらかと言うとネガティブ用件が増えると今は考えられている。
「筋肉痛がなぜおこるか」ということもよくわかっていないのだが、ネガティブ動作で多く反復すると筋肉痛がひどくなり、「ネガティブ動作は筋破断を促す」ということは良くいわれる。
極度の筋肉痛は熱を持つくらいで、痛くて回復に1週間くらい掛かるので、その間何も出来ない事が多い。
ところが前者のような乳酸を過多に発生させる方法だと、筋肉痛はあまり起こらないから、1週間のうちに2~3回トレーニングが出来る。
週に2~3回トレーニングするのと、1回しかトレーニングしないのでは、多分、週に2~3回トレーニングする方が明らかに肥大効率が良い。
そのため筋肉痛は、満足感や、強度が適正より過ぎたかな?という目安にしかならない。
しかし、筋破断と筋肉痛は関係がわからない。
筋破断が発生するとそれをコラーゲンで一時的に埋め、その後時間をかけて筋が補修される。これは数日間の休養が必要である。
筋がきちんと補修される前に同様の行為を行うと、筋肉間にはコラーゲンのような物質が増える。
コラーゲンは筋肉として働かないので出力は増えないが、しかし周囲径(断面積)は増える。筋肥大と言えるかどうかはちょっと難しい。
少なくともアスリートとして行う場合は、周囲径(断面積)の増加に伴う筋出力が欲しいために、筋肥大時には焦らずに十分な休憩が必要といえる。