料理は、
1、加熱する
2、味を整える
3、食べる
の順番が普通である。
「煮込み」のように味をしみ込ませた方が美味しい料理だと、2の段階で味をつけた汁でグツグツと煮込むことになる。
みそ汁の間違いやすいところは、煮込みと同じように味噌の汁で煮てしまう事にある。それだとみそ汁本来の美味しさではなくなる。
美味しいみそ汁を作るには、次のような手順で考えると分かりやすい。
キノコと豆腐、吸い口がネギの味噌汁を作るとしたら、
1、火を通さないと食べられない具(キノコ)を煮る。
2、味噌で味付けをする。
3、火を通さなくて良い具(豆腐)を入れる(ワカメ、油揚げ、麩などもここ)。
4、椀によそう。
5、吸い口(薬味)をのせる。
となる。
この3が分かりにくくさせるのだが、例えば豆腐を入れるとみそ汁の温度が下がるので、ぬるくなった分を再加熱するが、煮込むのではない。そのため30秒程度の加熱となる。
そのため豆腐は火が通りすぐに芯まで温かくなるように、小さく切るほうが良い。
木綿豆腐で田舎風に仕上げたいとしても、1cm 角程度が限度である(写真参照)。
写真の豆腐とワカメのみそ汁は、
1、先に味噌を出汁に溶き、
2、豆腐を入れてちょっとだけ再加熱し、
3、火を止めてからワカメを入れて、
4、椀によそり、
5、ネギをちらす。
となる。
ホテルの朝食や料理屋で供されるような豆腐とワカメがちょっとだけ入れた上品な感じのみそ汁では、この写真よりも具が少なくなる。
そういう場合は再加熱する必要がないので、味噌を溶いた出汁の中に豆腐とワカメを入れるだけで良い。それから飾りネギをちらす。
それでいて、こういう手順のほうが十分に美味しい。
豆腐は煮込むとしわしわになったり、スが入ったりする。
ワカメは長時間加熱すると色が茶色くなって、くたくたになって案配が良くない。
みそ汁を長時間煮込むとそうなるので、当然お客様にはご提供できないとなる。
また、塩分の摂取量を減らす上でも豆腐の後入れは有効である。
豆腐はおおよそ 90% が水分だか、豆腐を味噌を溶く前に茹でたり、味噌を溶いた後に数分間煮込んでしまうと、豆腐から水が出て味が薄くなる。
そうすると全体に味噌の量を増やさないと美味しく感じないので、1椀あたりの塩分量が多くなってしまう。
豆腐を後から入れるちょっと温める程度であれば、豆腐から水気が出てみそ汁が薄まる割合が低くなるので塩分の摂取量が減る、という案配である。
また、味噌で加熱する時間が短いほど、出汁の香りで食が進むといえる。