精進料理は仏教に元をたどるものである。
インドの宗教に基づいた同等の考えは、ヒンドゥー教やジャイナ教にある。
ベジタリアンは宗教に関係のない英国ベジタリアン協会で作られた英語である。インドのそれが紀元に近いのかもしれないが、直接の関係は無い。日本語の「菜食主義者」はその英語を訳した言葉である。
精進料理やヒンドゥー教などにあるその考え方にはいくつか違いが有るが、要約すると、
「殺生をして食する事を禁じているので、動物は殺傷しなければ動物性タンパク質は禁じない。
植物でも根で子孫を残す植物(球根類植物)は食べてはならない」
となる。そのため乳や玉子(これらはまだ生命が宿っていないと考える)は摂っても構わないし、ニンニクやタマネギのような球根類植物は摂らない。
「ニンニクを食べるとギラギラして夜の界隈に行きたくなるだろうから、修行者は食べないのではないか」
というのは、あまり正確ではないというか、どちらかというとかなり俗世の方向に間違っているので、そういう風に考えた人は日頃の行動を見直してください(笑)。
ただし、宗派や考え方によって、
「動物性はまったく摂らない」場合も有るし、
「他人がその人の為に殺生した動物でなければ摂っても良い(仏教の一宗派)」というのもあれば、
「ヨーグルトは乳酸菌が入っているから、食べると乳酸菌を殺生するのでダメ(インド周辺)」
「牛乳を摂りすぎると子牛が乳を飲めなくて死ぬのでダメ(インド周辺)」
というようなものもある。
ベジタリアンは後から作られた概念なので、アジア人やアジアの宗教(小乗仏教や大乗仏教、ヒンドゥー教やジャイナ教など)の殺生を基準としたものとは異なる。
アジアのそれは基本的には殺生をしなければ良いのであって、逆に殺生に繋がるのであれば植物もダメなのだが、ベジタリアンの場合は動物由来の食材を摂ることを禁じることが基準となっている。
このベジタリアンはいくつかあるのだが、ポピュラーなものは
「ダイエタリー・ビーガン」(動物性を摂る事は厭わない)や
「ラクト・オポ・ベジタリアン」(乳製品や玉子は問わない)で
ざっくり言うと、野菜がメインな和食に少しの肉類や乳製品や玉子を加えるようなものである。
場合により「魚介類」はダメな事があるため、「鰹節のだしのみそ汁はダメ」となるものもある。
「ヴィーガン」は完全菜食主義者に分類され、動物性由来は摂らない。蜂蜜もダメとなる。
この人たちはかなりマニアックで、日本で暮らすには相当大変である。私も実験してみたが、お金が掛かった。
このように「ベジタリアン」は宗教に由来する概念ではないので、それ以外にも
「哺乳類を摂らなければ良い(玉子、牛乳、鳥、魚介は可)」
「自然食主義者(加工食品はダメ)」
「液体しか摂らない(水、ジュース類、乳製品は可)」
など、殺生を基準とする精進料理とは発展の仕方が相当異なる。