運動時の食事10 なぜ筋肥大に炭水化物が必要なのか?

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 「なぜ筋肥大に炭水化物が必要なのか?」
 「筋肉はタンパク質だからそれだけたくさん摂っていれば十分で、炭水化物や脂肪を摂らなければ体脂肪にならなくて良いのではないか?」

 と、お考えの方もおられると思います。

 これは間違っています。


 理由を説明します。

1、体内に保存されているエネルギー源として、
  糖質は、
    筋グリコーゲンとして 300g(1200Kcal)
    肝グリコーゲンとして 67g(268Kcal)
    血糖として 3g(12Kcal)
  脂質は、9kg (81,000Kcal)程度あります。
    (体重60kg、体脂肪率15%として)
    (NSCA-JAPAN, ストレングス&コンディショニング1、P60、大修館書店)

2、運動をすると筋グリコーゲンから使われます。

3、その運動刺激により中性脂肪(体脂肪の事。皮下脂肪や内臓脂肪)が分解され遊離脂肪酸となり、ATP回路でエネルギー化される量が増えます。

4、強度な運動中は筋グリコーゲンが主に消費されます(クレアチンは筋肥大を目的とする 10RM の強度ではほとんど消費されませんし、クレアチンは筋グリコーゲンや中性脂肪等から合成されるものです)。

5、弱い運動強度(おおよそ AT 未満)では、脂質と筋グリコーゲンはほぼ半々の割合で消費されます。

6、肝グリコーゲンは血糖となり補給されますが、血糖は全量で 4g 程度しか無く、またそのほとんどは脳に消費されます。運動中に血糖により筋肉に筋グリコーゲンが補給されると考えられる量はわずかなため、計算に入れなくて良いでしょう。

7、筋肥大が目的の場合に必要な運動強度は、この4に該当します。
 
 
 
 前ページの 800Kcal / 2h の筋肥大の為の運動(トレーニング)をしたとすると、エネルギー消費の割合として、
- 1時間は糖質を消費するレジスタンス運動(400Kcal = 糖質 100g)、
- 残り1時間をアップとクーリングで糖質と脂質を半々(糖質 50g、脂質 22g)
程度と考えられます。

 これにより、このトレーニングでは、150g の筋グリコーゲンと、22g の脂質が消費される計算となります(実際はレジスタンス運動の強度はもう少し強く、前後はもう少し弱いと思いますが、2時間の平均が 400Kcal / h で計算しています)。


 消費された筋グリコーゲンは外部から炭水化物(糖質)を摂取する事で、筋グリコーゲンとして補給されます。
 外部から補給されない場合は、筋を分解して糖新生を行い筋グリコーゲンを補充します。この場合、およそ 150g の糖質を補充する為に同量程度のタンパク質が分解される事になります。筋肉量としては最大 750g 程度になります(水分80%として)。

 そうすると、せっかく強い強度の運動しても筋肥大が起こらないどころか、どんどん減っていくとなります。

 そのためこれを避ける為に、「筋肥大には糖質が必要です」となります。

 「太るのが嫌だから、運動した後はお腹が空いても我慢している」
というのは、ある程度の強度の運動をした場合は間違った考えです(糖尿病等の減量の場合は異なります)。
 
 
 
 またこれは、最低限使った分は必要で、どの程度多ければ筋肥大の最大効果が出るのかという事までは分かりません。そもそも運動強度自体が計算値通りにいくかどうか分からない行為で、それを一定の計算式で求めようとするには限界が有ります。

 呼気分解をすれば出来なくはないですが、費用がかかりすぎますし、それをしたところで運動時の消費割合が分かるだけです。それから筋肉を作るのにどの程度が必要かには繋がりませんし、それようなデータの積み重ねを聞いた事が有りません。

 そのため私は前述した様に
「消費に適した PFC バランスで、運動消費の分をさらにプラスして摂りましょう」
とお勧めしています。私の場合はこれでほぼ満足する結果が出ています。下記中程。
http://hisajp.info/2008/09/post_74.html
 
 
 
 「この筋グリコーゲンの補充に脂質(中性脂肪、体脂肪のこと)が使えるのではないか?」
 とお考えの方もおられるかもしれませんが、それは不可能です。糖質から脂質の再合成回路は有りますが、脂質から糖質への再合成は無い為です。

 また、脂質は ATP 回路では遅いエネルギー代謝です。
 遅いという言い方をするのですが、分かりやすく言い換えると、一度に大量のエネルギー補給ができないという事です。
 そのため脂質は大きな出力を必要とする運動のエネルギーには向いていません。

 筋肉は筋肉が変化するだけの刺激を与えないと肥大しない性質が有ります。
 刺激を与えるという事は要するに筋肉が出力するという事ですが、筋出力の60%程度以上の出力で筋持久力が向上し、75%以上で筋肥大し、90%以上で筋出力が向上するとなっています。

 脂質の代謝ではこれに必要なだけの刺激は加わらないため、理論上は、「脂質を燃やす運動強度では筋肥大はあり得えない」となります。
 
 
 

http://hisajp.info/2008/09/post_75.html


http://hisajp.info/2008/09/post_80.html

このブログ記事について

このページは、hisaが2008年9月22日 14:10に書いたブログ記事です。

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