筋肉の説明 5、「しなやかな筋」というものはない。

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「しなやかな筋」というものはない。


「しなやかな筋肉の為には、低負荷高反復数のトレーニングがよい」
「しなやかな筋肉には遅筋割合を増やすほうがよい」
「女性らしいしなやかなカラダを目指すには、遅筋を動かすヨガやピラティスがよい」

 というのを見かけるが、全く根拠のないものと私は考えている。

 まず第一に「しなやか」に対する定義が無い。
 「しなやか」というのは動作から見える結果であり、筋肉そのものには硬度の違いしかない。機械で計測できない概念上のものは数値化が出来ない。

 このような場合には、数値化する事ができる「柔らかい筋、固い筋」という表現での方が正しい。
 「しなやか」というような形容詞では、人それぞれ基準や捉え方が異なるので混乱を招き、また的確な対応が出来なくなる要因となる。


 次に、
「遅筋が速筋に較べ、しなやかである」
「遅筋は速筋に較べ、柔軟性に富む」
というの何ら根拠が無い。

 もしそれであれば、遅筋割合が最も多いと考えられているヒラメ筋が一番柔らかく、速筋割合が最も多いと考えられる上腕三頭筋は最も固いとなるが、そう言う事は無く大抵同じ程度である。

 また現実的には大抵ヒラメ筋の方が張っていて硬い。
 そして、張っていて硬い、というのは筋そのものが本来持つ硬度ではなく、別な条件で変えられたものである。


 短距離のアスリートの筋は中間筋または速筋で占められる割合が 80% 程度と言われるが、彼らの脚は触ると、柔軟性に富み柔らかい。
 対して長距離アスリートの筋は遅筋割合が 80% と言われるが、こちらもまた同じ様に柔らかい。ただし柔軟性は短距離走者に較べると足りない気がする。
 筋ばっている感じがするのは長距離走者の方である。
 とはいえこれは私の主観であり、きちんと計測した訳ではない。


 また、表面の緊張は、その時点で運動しているのであればパンプアップの影響を受けるし、運動の有る無しにかかわらず筋スパズムの影響なども受けるので、前述のヒラメ筋が張りで硬いようなもので、一概には何とも言えない。


 経年により筋が固くなるのもある。若い牛より年齢の高い牛の方が肉が硬い。
 さらには去勢したかどうかも関係してくる。


 こういういろいろなものが絡んだ結果として表面化してくるのである。
 
 
 
 「しなやか」とは動きの結果見えるものである。 

 「しなやか」とは、動きの結果見えるものと私は考えているから、ヨガやピラティスを行う事により今まで動きにくかった部位の可動が良くなり、動きが良く見える、というのは十分にあり得る。
 ただしこれは運動の習得に因る身体の使用方法の変化であり、筋組成の関係ではない。

 私は前屈測定などが成績があまり良くないが(指先が床に届くかどうかという程度である)、動きの見た目はしなやかである。
 私より筋そのものが柔らかいと考えられる若い女性が、また前屈をしてもらうと床にべったりと手のひらが着く方が、見た目のしなやかさでは私より劣る事もある。
 これは運動(= 見た目の動き)に整合性が欠けているから、しなやかに見えないのであろう。

 そのため運動に整合性が出るようなトレーニングをすれば、誰もがしなやかな動きになる。
 そのしなやかな動きを行うに必要な身体条件としては、関節の構造上の可動範囲、前後に着く筋の柔軟性や、それには筋スパズムの有無、パンプアップの状態などが絡んでくる。

 それらの身体面をトレーニングにより向上させ、その上で動きそのものを習得すれば良いのである。
 これは競技練習の過程と全く同じである。


 柔軟性で言えば、筋量が足りなくて緊張が続いているようなものもあるし、姿勢が悪くて一部の筋が張ってしまい柔軟性を欠いているような場合もある。

 そのため、何かの目的に対して、総合的にどうするか、というのが最も的確な方法である。

 それを「○○が良い」と単一面からいうのは、あまり的確でないであろう。


http://hisajp.info/2008/11/post_118.html


インナーマッスル1
http://hisajp.info/2008/11/post_112.html

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このページは、hisaが2008年11月 7日 10:03に書いたブログ記事です。

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