姿勢と気の流れ12 身体の前後バランス

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 人間が立っていられる理由、動ける理由

 人間は立って静止している時は静的バランスが中立で、そのため停止していられます。
 この重心を前側にずらす事で前方へ歩きます。後の場合は後方に重心をずらします。
 左右の方向に動くカニ歩きも同じで、重心が左右のどちらかへずらす事で移動します。

 前後歩きだと着地している方の足は 100% の体重を支え、遊脚(空中にある脚)の荷重は 0% で何も支えていません。
 同様に右側にずれるとしたら右脚だけで体重の 100% を支えていて、クロスしている最中の遊脚の荷重は 0% です。
 1% でも荷重が残っているときは、その足は浮かないのです(これを突き詰めていくと動作がすごく改善されます)。

 重心のずらす幅が小さい時は、移動速度は遅くなります。
 ずらす幅が大きいと早めに遊足を着地させないと転んでしまうので、交互に早く着地させていると、やがて走る事になります。


 このように人間は重心の崩れを使い重力を利用して動くので、エネルギーが少なくて済みます。
 4つ足の動物の場合は、重心位置は人間の様に足の外側にずれる事は無いので、筋力で動く割合が高くなります。


 止まっているときは足裏の前後長以内に重心位置が収まっていないとなりません。そうでないとどこかへ動いてしまいます。

 その前後中立位置が悪いと動いてしまうので、そういう人は力を入れてバランスを合わせる様にしないとなりません。
 こういう立ち姿勢のバランスは大きな力が要らないので主に遅筋が使われます(後述、「サイズの原理」参照)。

 しかし本来なら何も力を入れずに立っていられるものが、力を入れないと立っていられないと言うのは、無駄な力の発揮と言えます。
 無駄な力といっても、自分が意識して行う様な力の発揮ではなく脊髄反射で自働的に行われているために、自分では力を出しているとは感じない場合も多いと思います。

 しかしこのような無駄な力が大きくなると筋肉は常に働いている事になるので、緊張が継続すると固くなったりします。
 または元々力が入っている上に急な動作が加わるとその部位の速筋が動員されるため、特定の部位が肥大したりするのではないかと考えています。
 やがてこういう事が筋の腱化にも繋がるのかもしれません。


(サイズの原理とは?)  ぐーぐる
 筋肉が働く際は「サイズの原理」と言う法則にのっとり、小さい力の発揮のときは小さい筋肉から使われます。これは省エネに役立ちます。
 厳密には小さいと言うよりは、小さな単位で働ける筋肉と言う方が正確でしょう。そしてこれらは主に遅筋です。

 何かに足が引っかかって転びそうなときは、「サイズの原理」を無視して速筋が急に収縮して、安全を保ちます。
 高齢者の方が若者と較べ転びやすいのは、そのような急な動きを行うだけの筋量が不足しているためと考えられます。
 
 
 
 なぜ前後バランスが崩れるのか

 身体の前後バランスは、左右バランスと同様の理由で崩れてきます。

1、足裏のアーチの形状
2、足首から大腿骨までの関節の可動範囲や骨の長さの違い
3、腰から上の関節の可動範囲や骨の長さの違い
4、歯の噛み合わせ
5、運動や生活などの様々な活動の内容により、筋肉の付着バランスが良くない
6、恒常的な悪い姿勢によるもの

 私見では、前後バランスの崩れが起こる原因には比較的5番以降が多い様に感じ、対して左右バランスでは1〜4番が占める割合が高いように感じます。

 前後バランスですが、例えば顎が上がっている(前に出ている)様な例では、重心が前になりバランスを整えるために背中の緊張が高くなる事で後ろ重心になったり、またはそれにより腹筋群が力を発揮しなくなり腹が出て前重心で落ち着いているような事も有ります。

 ベンチプレスが好きな人は大胸筋は短縮しやすい為に腕がつられて前へ出て来て前重心になったりします。
 また腹筋が弱い人の場合は骨盤の前傾が強くなり、それにより重心が前へ出たり、逆にエビぞりが強くなり重心が後ろに出る事も考えられます。
 それらがやがてハムストリングスやカーフの緊張を招いたり、さまざまな体幹の筋群の緊張を招いたりし、それによりますますその方向の動きが増長されていくのではないかと考えています。

 上部の方に原因が有る場合はそれが結果的にどちらに働くのかは都度変わるので、同じ原因でありながら症状は逆の方向に表れる場合も有ります。
 前述の左右バランスの様に足裏の原因から発生している場合は比較的原因と症状が一致しやすいのに対し、上方の場合はそれとは異なる様に感じます。


 ちなみに元から男性は前屈が弱く、女性は後屈が弱い傾向に有ります。
 特にBMI が高めの、やや年配の男性や女性の方は、それぞれ前屈や後屈がしにくくなる傾向が表れてきます。
 これは前後の重心がずれている為にそれに拮抗する筋が常に使われていて筋の緊張が続き、それを長い間続けているとそれらの筋がほとんど伸展しなくなる為ではないかと考えています。

 そのためこのような場合は色々原因を探り、弱い方を強化するなり、または短縮している筋を伸ばす様にすると良いでしょう。
 
 
 
 前後バランスを整えるのは危険が少ないが難しい

 これは私がまれに言う「身体に表れている症状そのものを直すと、やがて原因が直る事もある」のようなものに近いです。
 逆に原因を直さないとどうにもならないものも同じような割合であります。

 私の見る範囲では、前後バランスの崩れは比較的上半身の緊張が他の部位に影響している事が多いので、この矯正の方が左右バランスより危険性が少ない様に考えています。

 例えば前屈が難しいのであれば、それそのものを改善していく事で良い結果に繋がります。
 これは単純に「前曲がりの柔軟体操」をすれば良いと言うのではなく、弱い筋を強化して、短縮している筋を弱めるなり緊張を取るなりでバランスが整えやすいです。
 こういう硬い人に前曲がりの柔軟体操をしてもらっても、反射で余計固くなったりします。

 そのためこのような場合は拮抗筋のコントロールを覚える事で曲げるのも有効です。これは主動筋に力を要れると拮抗筋は脱力するため、その特性を活かして行う方法です。
 また、PNF, トリガーポイントの使用で上手に緩む事も多いです。

 しかし、性差も大きく指導者が当然と思うような事が全く出来なかったりするので、お互いが違いすぎてどうして良いのか見えない事も有ります。
 そのためそのような場合は同性から指導を受ける方法も有るでしょうし、何らかの分析手法に長けている方に依頼するのも方法でしょう。

 もっと難しいのは、このような前後バランスは体癖であり、それを長い間続けているので、本人からなかなかその癖が抜けないものです。
 一回整えても家に帰ると同じ身体の使いに戻るので、本人の意識が変わるまでは同じ事を繰り返してしまうため、改善まで結構時間がかかる事が多い様に感じます。


http://hisajp.info/2009/04/post_236.html


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このページは、hisaが2009年4月 9日 19:07に書いたブログ記事です。

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