身体の捻れの発生の原因
身体の捩じれというのは、左右バランスと前後バランスの複合的な結果で、かつ単独的なものもあります。
また同じ原因でもどう出るかは人により異なり、良い様に働く事もその逆の事も有ります。
例えば左膝だけが曲がって(屈曲)いるとします。
1、まっすぐ落ちると左肩が下がる。
2、左膝が前へ出る事で左骨盤が前へ出ると、時計方向に捩じれる。
3、左腰が後へ落ちると、反時計方向に捩じれる。
と、3つくらいの異なる症状が現れます。大抵は2番目です。
このときに今度は右の足裏の形状でアーチが落ちているとすると、右膝が内へ入る事でこっちの方が影響が強いとすると左膝の症状は消されるかもしれませんし、上体が前傾するかもしれませんし、どう影響を及ぼすかは人により異なる訳です。
下半身が時計回り、上半身は逆と言う事も有ります。
これにジャンプ動作を伴うと、着地の際は癖の強い方向へ身体が使われて衝撃を吸収する傾向があり、その癖が増長される事が多いです。
そうすると、その方向の拮抗筋が伸展されるので、それら拮抗筋は発達する傾向が有ります。
縮むときは伸展が強い方が収縮幅が広いので、これでも発展する訳です。
これにより、どちらかの大臀筋(ケツ筋)が発達し、逆側の大腿四頭筋が肥大したりするわけです。
またその中でも片脚は外側、逆脚は内側が発達したりします。
この様に左右や内外では異なって肥大する場合が多くあります。
身体の捻れが身体の動きに与える影響
競技の例
球技の様な片側動作
大抵の球技は左右非対称の動きです。
野球のバッティングは連続する打撃動作ではないので(1投球につき1スイング)、捻って溜めておいたエネルギーを発揮できるので、どちらかというと捻りを上手く使える割合が高い様に感じます。
これがテニスだとすると、これは走って打ってを連続し、かつフォアハンドとバックハンドが有ります。こういう競技の場合は左右のバランス差を自分の都合だけで使いにくいので、振られるのに強い選手がいれば、片側だけ強い選手がいたりします。
これがサッカーだと、これは前方向へ移動しながらの攻撃が多く、突然のブロックやコンタクトも有ります。上手い選手は自分の間合いで攻めていけるように感じます。
陸上やスキーのような両側動作
これが陸上競技やスキー、自転車のような動作では、また異なります。
ランのような運動では、捻りが出るのは長距離では疲れてしまいますし(経験の少ない選手は左右の非均等が多い)、短距離ではタイムロスが増えます。特に短距離では動きが速い為にワサワサと左右に振られ易いです。
筋としてみると片側の腿上げが弱かったり、腕の振りは大胸筋/広背筋のバランスで前後ろの片方が強かったりで、やがてそれが動作中に蓄積して無駄が増えるような気がします。
これに近い動きはスケートにも出やすく思います。
スキーやスノーボードではどちらかの重心割合が高く、片方のターンが上手くいかなかったり、ショートターンの連続が苦手な方の場合などは、左右の捻れが原因の事も多いです。
自転車ですと、ペダルを踏む動作と引き上げる動作(注:競技用の自転車は足を固定しているので、踏むだけでなく引き上げ動作もしてペダルを回転させ、自転車を進めています)と、上半身によるハンドルの引きつけが有ります。その際上半身が弱かったり左右の片側が弱くて捻れが出ていたりすると、昇りが弱い(連続動作が途切れる為)とか片方のコーナーが怖いなどが表れます。
また、踏み込みと引き上げの運動ベクトルやタイミングがずれていると、またそれも面倒です。
コンタクト競技
すもうは重くて強い人は大抵真っ正面を向いています。
相撲に限らず、どっしりとしたひとは捻れが少ない様です。
どちらかというと軽い人の方が捻れは強い様に思います。
「斜に構える(はすにかまえる)」という使いです。
そうした方が力の発揮は強まる例もある訳です。
ラグビーも強いバックスは正面を向いているような感じを受けます。
柔道は重量級でも片側動作が多い為か、どちらかに寄っていると言う気がします。
空手やボクシングは両側動作とも片側動作とも言えます。
構えやジャブとストレートのような違いも有るので、右利き左利きや身体の癖が現れてきます。
音楽
楽器演奏とすると、どちらかというと両手を均等に使うようなパーカッション(ティンパニ)があったり、同じ打楽器でもドラムスでは片側動作が多くなります。
ピアノは両方を有る程度均等に使いますが、大抵は曲自体が右手と左手でリードと伴奏に分かれているので、左右が不均等になってきます。
弦楽器は完全に非対称です。
管楽器はここに呼吸動作が加わるので、またちょっと違う感じになります。
奏者の場合は、動きが有るとしても楽器の演奏に必要な動作の為、身体の無理はあまり生じない様に思います。演出上無理な動きをするのはあまり無い為です。
しかし身体のバランスが悪くなってくるとしっくりと来ない事が多い様です。
歌は、合唱の様に正面向いて歌えるのであれば、左右均等であり呼吸もするのでほぼ均等動作です。
ソリストでは演出も有るので何とも言えなく、また動きを伴う事も多いです。
マイクを持つような音楽であれば、これもまた片側動作になります。
バランスが崩れてくると、管楽器や歌い手の場合は「息が入らない」というのがあります。こういうのは体幹の緊張から来ている事が多いので、早めに対処する方が良いでしょう。
一般的な生活
一般的な生活では連続する早い動作が少ないので、捻りが動作に影響を与える事は少ないと思います。
しかし、だるいとかそういう不定愁訴(ふていしゅうそ)の原因としてはどうなのかなあと思う事が有り、そういう場合は運動不足であったり、悪い姿勢の継続で崩れている事が多い様に感じます(これは病気に関する見解では有りません)。
身体のアライメントの調整
このように身体のバランスは、左右バランス、前後バランス、捻りの3通りがあり、それぞれが絡んでいます。
こういうの簡単に「身体のアライメント」のように言う事が多いです。
静的なものと、動的なものを両方含みます。
身体アライメントも自分の体癖に合った方向のズレと動きに上手く合致点を見つけられると、簡単に動作が向上する事も有ります。
しかし大抵はそういうのは意識していないで、常日頃から、動きが良くなったり悪くなったりします。
また、それが順次進んだ症状であれば本人も慣れていきますが、急に発生したりすると慣れない場合も有り、原因不明で調子が悪いと言うような事も多いです。
このようなアライメントの崩れは、ある一定の範囲で発生している場合では、問題が露呈しない様に思います。逆に調子が良かったりします。
しかしそれが限度を超えると、やはりどこかで破綻します。
通常であれば、寝て起きるまでに元に戻る訳ですが、刺激が強かったりすると数日戻らなかったり、しばらくそのままの事も有ります。
そのためある程度の範囲内で、かつ自分の調子の良い方向にしておきたいのですが、行き過ぎると困るので、その調整をどうするかです。
ベーシックな基礎トレーニングの方が矯正効果が高く(バーベルデッドリフトやバーベルスクワットなど)、そういう基礎的なトレーニングは上達してからも必要です。最初のうちはこういう事で整える事が出来ます。
また前述した「朝の体操」のような身体動作だけでもだいぶ効果があります。
もうちょっと進んで、前後左右や上下の筋バランスが整っていない事が原因だとすると、不足している種目を行う事で全身を整えやすくなります。これは簡単に言うと嫌いな種目をやる事です。ベンチプレスだけやっている人は他のもやってください。
この段階でも、前述した「朝の体操」のような身体動作だけでもだいぶ効果があります。四股のような動きは一般生活ではほぼしないので、臀部、背筋などに刺激が加わるので、そういうものでも矯正されます。
運動やトレーニングの初心者の方の場合は、最初はこれら上記二つのような身体状態の事が多いので、バーベルを使ったベーシックな基礎トレーニングと、弱い部位を強くする方向で整えるのが普通でしょう。
それに身体の使い方を良くするような刺激を与えるともっと良いでしょう。
とはいえ急に激しく行うのは影響が大きい場合も有りますので、ある程度の時間を掛ける必要があります。
強すぎる部分を弱くする方法も有るのですが、初心者の段階で個人で行うのは技術的にも理論的構築も難しいので、強化の方向が多くなります。
プラス方向に行くのは組み立てやすいですが、逆は理論的にも技術的にも大変です。
アライメントの崩れが発生している原因が、トレーニングによる矯正で整いにくいような足裏や骨格に起因するような身体的な条件であれば、それを優先して整えるような筋トレをしたり、インソールを使うなどが良いと思います。
この筋トレとはかなり局所的なものになり、ポストリハビリ的な行為になります。
また、この段階では自力だけでは整えにくいので、身体に詳しいカイロや整体、鍼灸やマッサージ、運動指導者などの力を借りるのも方法でしょう。
医療機関での治療が必要なものの話しは、トレーニング論や身体論から外れるので、ここでは省きます。
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