みそ汁は、懐石でもおもてなししていただけるが、民間食でもあるため、結構適当だ。
民間食としての元の味噌汁は、味噌を溶かしただけだった。
これだけでもバランス的には大豆蛋白と塩分も入っているし、常温での保存も、携行も利く優れた食品だ。今でも山歩きに持って行けるし、そのままでも食べられる。
やがていろいろ具が入るようになった。
通常はそこで取れる食材で作られるみそ汁だが、味付けとして味噌が使われる料理もある。
豚汁や、三平汁、芋煮がこれに該当し、味噌味であってもこれはみそ汁とは呼ばないで、「郷土料理」と分けて考えた方が適切と思う(豚汁はどこでもやっているからこの分類は正解ではない気がするが、良しとしてください)。
おいしいみそ汁に、沢山の具は、私は要らない様に思う。
具はやはり、3品で、「主、副、吸口」のとするのがバランスが良いように思う。
こういう組み合わせの話は昔の本には書いてあったが、今はあまり見かけない。
そういうのをなしに、唐突に、「健康」とか、「具沢山」とか、「バランス良く」とか言ったりするのは、本当においしいみそ汁を知る機会を逃しているように思う。
食事のバランスは、全体を通しある程度の期間で整えるものであって、都度のみそ汁に求めるものではない。
私は朝食は大抵は日本食というか、ご飯とみそ汁と漬け物のある、昔風とも言えるような朝ご飯が好きで、実はみそ汁に具は大抵一つしか入れていない。
これは本来は外れているのだろうが、他のおかずとのバランスが取りにくくなる為で、敢えて具は単品にしている。
一汁一菜や、一汁三菜の場合は、みそ汁の具が3品となるのがおいしいように思う。
具の「主、副」の関係は、主が栄養の高い方で、副をサポートと考えると分かりやすい。夫婦みたいなものだ。
「吸い口」は、それを引き立てるものだ。
具は、まったく同じ類いではダメだ。
かといってけんかするような組み合わせや、全体が重く感じるのも、ダメだ。
どちらも頼りないのも、それもダメだ。
「ダブルタンパク質」や、「ダブル葉野菜」というのは、どうしてもバランスが悪い。
「芋類」が入ると、ちょっと重く感じる。
「肉類」「玉子」「魚」が入ると、それも重く感じる。
みそ汁が出しゃばりすぎると、ご飯とおかずに勝ってしまうのである。
これだと食事全体のバランスが取れず、良くない。
おかずと被るのもダメなのである。
食材を被らせるは、元々和食としてダメなのである。
おかずに使われないものが、みそ汁の具として良い。
みそ汁の具の組み合わせは何でも良いのではない。
おいしいみそ汁の具の組み合わせを、旅館の食事などで覚えてくると、自宅でも楽しめる。
長く続いている伝統的な組み合わせは、おいしいのである。
古いのが残るのではない。おいしい組み合わせが残るのである。
そういうみそ汁は、たいてい出しゃばらない。
私の好きなみそ汁は、「豆腐、わかめ、吸い口でネギ」「絹豆腐、なめこ、吸い口でネギ」と、「豆腐」と「吸い口のネギ」が入るのが好きだ。
ネギは白いところを、透き通るほど薄く刻んだのが良い(西の方へ。関東ではネギは主に白い部分を食します)。
ネギを茹でるとぬったり感というかそういうしなびた感じを受けるので、吸い口でちょっと上に載せるくらいが好きだ(今朝の味噌汁はネギ汁でした。整合性がなく済みません。実は二日ぐらい経た疲れきったネギも好きです)。
これが「豆腐、タマネギ」という組み合わせになると甘くなるので、吸い口は「七味」が良かったりする。
かといって「刻みネギ」も捨てがたいが、「タマネギとネギ」という組み合わせは、いとこ同士の不倫みたいであまり良くない。
また、みそ汁に「七味」というと、ちょっと邪道というか、そんな気がしないでもない。
そうすると、さかのぼって、「豆腐、タマネギ」という組み合わせがまだ確立されていないのかもしれない。
「小松菜」が入るとシャキシャキ感が出て、「絹豆腐」とのくみあわせが好きだ。「木綿豆腐」も捨てがたい。 このときの吸い口は「刻みネギ」だ。
いや、「小松菜」だけも良い。かなり迷う。
「ほうれん草」は伝統と外れている気もするが、たまにすると嬉しい。
これは結構に何にでも合う。
「アサリ」「シジミ」の場合は単品とし、吸い口は「刻みネギ」が良い。
「アサリ」や「シジミ」の粒の大きさや、ネギの種類も大事だ。
江戸前ではすごい小さいシジミもあるが、それもまた乙だ。
こういう時の吸い口は「ワケギ」が良い。
「蛤(はまぐり)のみそ汁」てのも相当乙だ。すまし汁も良いがこれを味噌で行くってのは、相当の使い手だ。
多分絶対、学食では出ない(笑)。
季節で変わる取り合わせも楽しい。
「ミツバ」「セリ」「ミョウガ」の類いは、シンプルにすると引き立つ。それだけを味噌を溶いただけの熱々の汁の上に大量に載せるのも良いし、ちょっと熱を加えるのも良い。絹豆腐との組み合わせも良い。
多分続く