一つのトレーニングの与える効果は1種類に限定される
これを正確に認識するとトレーニング効果が得やすくなる。
分かりにくいかもしれないが、読んでほしい。
基礎的な事を例に書く。
筋肥大トレーニングは字の通り、「筋肉を肥大させる」事が目的のトレーニングである。
10RM 重量で目一杯頑張って、なおかつフォーストレップやマルチパウンテージを行う事もある。
そのようにしてとことんまで筋肥大を求めるトレーニングである。
筋肉が肥大し断面積が増えるとそれに比例して出力が増えるため、20% 断面積が増加したら挙上重量は 20% 上がる。
欲しいものは「筋肥大」である。挙上重量は筋肉の肥大に比例して上がるが重量増加は求めるものではなく単なる結果である。
では、同じく基礎的なトレーニングの一つの、「筋出力向上トレーニング(1~3RM で行う、低速出力を大きくする為トレーニング)」を考えてみよう。
これは筋肉の肥大は関係なく、同じ筋肉の量で「運動神経の限界を高める」ようなもので、今ある筋肉でどこまで力を出せるかを狙うものである。簡単に言うと「火事場の馬鹿力」を増やしたい為のトレーニングである。
体重制競技では体重が増えると困る事もある。筋肥大をすると大抵体重が増えるがそうさせたくない。そのためこれは「肥大をさせないで出力を増やす為のトレーニング」といえよう。
これらふたつ、「筋肥大」と「筋出力の向上」は同時に起こる場合もあるし、そうでない場合もある。また、一緒に起こって都合が良いときと、そうで無いときに分かれる。
ところがあまり心配する必要はなく、「筋出力向上トレーニング(1~3RM)」をしているときは、あまり筋肥大は起こらないのである。もし肥大が起こっても少しだし、それも栄養の摂取で加減が出来る。
「じゃあ、栄養をたくさん摂りながら筋出力向上トレーニング(1~3RM)をしたら、筋肥大しながら筋出力も上がるのではないか? そいつは都合が良さそうだ」
と思われるかもしれないが、そうもならない。
なぜかというとこの方法の場合、「筋肥大に必要な刺激が充分に加わらない為」である。
そのため脂肪分解の働きも少ないだろうので、栄養を摂りすぎると脂肪合成が増えると思われる(ただしこの方法で脂肪増加を行う研究は見た事がないので推察である)。
そのため筋出力向上トレーニングで同時に肥大したとしても、「肥大目的で肥大した」というよりは、「意図に反して勝手に肥大していた」というようなダメなトレーニングと言える場合もある。
では、「筋肥大トレーニング(10RM)」と「筋持久トレーニング(20RM)」ではどうかというと、これも同じく同時に両方の効果は得られない。
この様に「筋肥大」「筋出力の向上」「筋持久力の向上」の様な基礎的なトレーニングですら、逆に言うと基礎的だからこそ、同時に二つ三つの効果を得る事は無理なのである。
トレーニングを始めて間もない頃であれば、どれもが同じような割合で同時に起こる様にみえる。
実はそう見えるだけで実際は筋肥大も筋出力の向上も筋持久の向上も起こってなく、運動に慣れていないからパンプアップが長引き、神経系の発達により挙上重量が上がり、運動に慣れるにつれ回復能力が向上しているのである。
自分でどれかを選んで行ってもいろいろな反応が一度に出ている状態で、選んでもその通りに出来ていない。
本格的に効果が現れる前の身体が対応している段階で、これが自然な発展で、避けようも選択もコントロール出来ないのである。
この状態は本格的なトレーニングを始めてから、大体1〜3ヶ月間くらい続く。
実はこのような生理的な現象が現れているという事は、人間の対応はすばらしくだれにもあり、身体は必ず変わるという事の証しでもある。
頑張ってもうちょっと続けてほしい。日の出は確実に来る。
本格的なトレーニングを長年積んでいる者には、どれかを主に他が薄い割合で起こる。
この
「一つのトレーニングの与える効果は1種類に限定される」
という原則を頭においてトレーニングプログラムを組んでいくと、短期長期問わずそれぞれのピリオドの中で最大限の効果が得やすいとなる。
時間が限られているときほど、こういう考え方は重要であろう。
二兎追うものは一兎も得ず
なのである。