異なる身体変化を同時に達成する事は可能か?
異なる身体変化を同時に達成する事は可能かと言うと、可能である。
しかしそれが最大効率かと言うと、そうでは無いだろう。
例えば「スーパーサーキットウエイトトレーニング」や「エアロビックダンス」では、心肺持久力と筋力の二つの向上を同時に狙う様なプログラムが多いが、それぞれに適度に効果がある。
脱線するが、「筋力」と「筋肥大」は全然意味が違う。
「筋力アップトレーニング」といってマッチョな男性がモデルなのを目にするが、あれは違う。あれは「筋肥大」した男性である。
「筋力」とは広義の筋肉の発揮する力全般を指す事が多く、狭義で筋断面積当たりの筋出力をさす場合もある。かなり曖昧に使える言葉である。
話しを戻す。
では、それぞれ「心肺持久力」と「筋力向上」を同じ期間を半分ずつに分けて別々に行った場合と較べるとどうかというと、私の経験上では「別々に行う方が遥かに良い」となる。
心肺持久力は強度な有酸素運動で、筋力は筋肥大トレーニングを主体に行う方が、それぞれ明確に結果が分かりやすい。また到達状況によりトレーニングの配分を変える事も出来、時間を有効に使いやすい。
ただし、前半のトレーニングプログラムで得た成果は、後半でいくらかは確実に落ちる。
だとしても別々の方が効果が高いだろう。ただし明確な比較研究は見たような覚えもあるが忘れた。
なぜ二つの目的の達成を同時に求めるのか? その必要性はあるか?
このような二つの目的をもつトレーニングを一度に行う事のメリットは、まずは「時間の短縮」が挙げられ、「指導やプログラムが個別でなくてもよい」、「前後に分けて行うと、後半の期間中に前半の効果が多少失うだろうが、それがなく同時に向上していく」、という様な事がいえるだろう。
デメリットは「最大効果ではない」ということであろう。
その上で、
「運動効果で健康になるようなことを簡易に行いたいのか」
「明確な身体の変化を得たいのか」
という全体の方針がまず最初に来るだろう。
前者の場合はこういうまんべんなく一度に行える方法は都合が良い。
また、導入期のような場合では、色々一度に出来るのはこれも都合が良い。その後、不足しているところを見つけ出す判断材料にもなる。
後者の場合は、
・「別々に行うほどの効果は得にくいかもしれない」
という事を理解した上で、
・HIIT の理論などで後付けしバージョンアップし、
・ベクトルを「心肺持久と筋力向上」から、例えば「筋力の向上と体脂肪を減少させる」の様な最適な組み合せを探り(これが正しい組み合せと言うのではない)、理論上と経験上行えるだけの知識と力があるという事が前提にあろう。
また、大幅な発展を望む期間なのか、維持(メンテナンス、今ある能力を落とさない)期間なのかによってもことなる。維持であればそれぞれの目的に適度な刺激が同時に入る方法は理にかなった方法とも言える。
高度な要求になってくると、単独で行うメリットは知った上での話しなので、必要なだけの知識と経験がないと出来ない。
経験や知識の薄い段階で、「これとあれを同時に達成したい」というのは、それは無理だろう。
このようなトレーナーの考える効果など関係なしに、
「エアロビックダンスが好き」「サーキットトレーニングが好き」
と言う方も相当おられる。これは嗜好である。
では「有酸素性運動したらガッシリしてきちゃった」というのを聞くのはなぜ?
これは単に運動経験が少ないから、運動を再開して間もないから、適切な身体適合反応が現れているのである。本格的な筋肥大ではない。
例えば臑や膝直上の大腿四頭筋の筋肉はジョグやウォーキングでも肥大するが、これは着地動作でその部位がエクスパンド(伸展)する為に部位的な筋破断がおこり、それらの筋肉が肥大してくるためである。
このような局部的な肥大であって、全身の筋肉量を筋肥大トレーニングの様に増やせる訳ではない。適合が済んだ時点で変化は終わる。
このような種類の運動をして延々と肥大が続きコンテストビルダー
http://www.ironman-japan.com/new/contest/2003olympia/01/01ronnie_main.html
の様に肥大するかと言うと、それは全くあり得ない話しである。
同様に「胸囲やヒップのボリュームを上げたい」というような部位的なコントロールはほぼまったくできない。
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